合気道の秘伝を学ぶ  - 井口合気流護身術(IAM護身術) 二段のブログ -

合気道を活用した護身術の技術と考え方の紹介

相手を動かすにはまず自分が動く & Don’t think, feel.

タイトル前半は以前紹介した相手を動かす秘訣ですが、さらに加えますと、
「相手が自発的に動き出したら、その動きの流れに乗るだけ。自ら動かそうとしないことが相手を動かす秘訣」
となります。先日、上手く技がかけられなかった時、再認識したのですが、今回はそれを少し掘り下げて紹介&記録しておきたいと思います。
 
 
合気道の技が効かない
先日、合気の技をいくつか技を披露する運びとなったのですが、陽で崩した後、陰を使って倒すという技が殆どの方に対して上手くかけられたものの、ある女性に上手くかける事ができませんでした。
 
体にダメージを与えない技なので、特段男女で動きを変えたつもりはなかったが故に、なぜ効かなかったのか分からなかったのですが、後日マンションフロントの重いドアを陽の技術で開けていた時、理由が分かりました。その理由は下記の3つです。
 
技が効かなかった理由
 ①:繋がった感覚が得られる距離まで近づけていなかった
 ②:女性のパーソナルスペースが狭かった為、微妙な動きが発生しなかった
 ③:技をかけるにあたって知識に頼り感覚を使っていなかった
 
下記ではそれぞれの理由に関し、少し掘り下げた説明をしていきます。
 
 
力が最も効率的に伝わる距離
①の繋がる感覚ですが、骨の技術(物理学)を使う際、もっとも運動エネルギーを伝えやすい位置≒相手と繋がった感覚がある距離は、かなり自分の身体に近い所にあります。陽の技術を使って重たいドアを開けようとすると、ドアと顔が接触する位接近したあたりからようやくドアに力が伝わり、動き出します。そのタイミングこそが技を使うタイミングです。
 
対して、先述の女性に対してはその距離まで詰められていなかったのだと気が付きました。なお距離を詰められなかった理由は、相手が女性であったからだけでなく、②の理由も含まれています。
 
 
パーソナルスペースを侵す
②に関して、相手に対して密着するレベルまで近づきますと、大概の方は軽くのけぞったり避けたりします。この為、男性陣に対しては崩す量が少なくて済み、その動きに乗ることもできたので楽に技がかかりました。さらに結果として距離も適切な位置になっていました。合気道ではかような微妙な動きも利用して技をつかいます。
 
対して先述の女性は、密着する直前まで近づいても動きが生じませんでした。相手が動き出さない場合でも、陽を維持し動きを止めなければ、陰へ移行する適切なタイミングが生まれたはずですが、待ちきれず技を使ってしまったのです。こうなってしまうと、倒すために筋力が必要となってしまうので、合気の技にならず倒せなかったのです。
 

Don’t think, feel
③に関して、私は「こう動けば技がかかるはずだ」という知識に基づいた動きをしていました。しかし、合気道の技は一期一会、相手や技次第で求められる最も効率的な動きは千差万別。感覚のセンサーを張り巡らせ、その時その時に応じた最適な動きを、感覚に従って導き出さねばなりません。
 
ドアを開ける時つい技を使ってしまう程、合気の技が身についていても、相手の微妙な動きを感知し、それに応じた適切なタイミングで動かないと合気の技は使えないのです。普段の稽古が形を覚える内容や力を要する内容ではなく、感覚を養う事に重きを置いているものこれが理由だと思います。
 
なお、感覚を研ぎ澄まし、相手と自分の動きをモニタリングしていれば①,②は自動的に修正できていたはずです。合気以外にも言える事ですが、思い込みや先入観は成功の妨げになるのだなと実感しました。

すべての点はいつか繋がり線となる

かのスティーブ=ジョブズが、スタンフォード大学の演説において「その時は無意味に感じても、いつか点と点は線で繋がり、意味を成す時が来る。だから色んなことを体験しておけ。」という意味の事を述べていました。
 
これは武道に関しても言える事だと思います。それはいろいろな武道を学ぶという意味ではなく、芸事等、武道と関係ない異分野を含めたあらゆる物事を経験するという意味です。
 
宮本武蔵は書や絵画を嗜んでいましたし、過去、体験させて頂いた際に伺った話ですが、武神館の初見良昭先生も生徒に芸事を嗜むよう指導していたそうです。(この場合は、忍者が素性を隠して潜入する為という意味合いもあったかもしれないとか。)
 
そして、この芸事というのが最初に述べた”点”になります。人が美しいと感じる本質の形や動きは、武道も芸事も根幹は一緒だと思います。この共通点を感じたり、一度距離を置いて武道を眺めたりする事で、普段の稽古で気が付かなかったことに気が付き、点が線となり、より上達できるのかもしれません。
 
 
余談ですが、私はある素材の開発業務に携わっておりますが、配属された際、上司から「開発者は、専門分野以外の知識を学ぶことに加え、大いに遊ばないといけない。そうしないと良い発想は出てこない。閉じた世界にいてはいけない。色んな事を知りなさい。」と指導されました。発想力を磨くためにも、様々な異分野に触れることは重要と思います。
 
 
そんなわけで、もともと非常に興味があった乗馬体験(全5回)をしてきました。
その時、乗馬と合気道の共通点を見つけたので紹介させていただきます。
 
軽速歩とよばれる走り方をする際、騎手は馬の動きに合わせて上下に動く必要があるのですが、この時、皮膚感覚の技術と、丹田を使う技術を使ってみるとうまく乗れ、インストラクターの方にも「コツをつかむのが早い」とほめられました。
 
どうやって乗ったかと言いますと、皮膚感覚に関しては、接触点の触覚に集中し、馬の動きを感知したら相手の意と動きに沿って自分が動くという、皮膚感覚の基礎を使いました。これだけでもそこそこリズミカルに乗れたのですが、時折気持ち良さを感じられない瞬間や、馬から伝わるエネルギーを上手く流しきれていない時がありました。
 
するとインストラクターの方が「脚や腕は意識せず、このあたり(丹田の位置)を先に動かして、脚があとからついてくるイメージで動いてください。あと、腕や脚に意識があると馬もそこに意識を感じてしまうので。」と指導してくれました。
 
これはまさに道場で学んだ合気道の動きと考え方でしたので、すっと腹に落ちるとともに、効率のよい動きの本質は一緒なのだなと感心するとともに、これまで学んできた動きが価値あるものだと再認識することができました。
 
 
私は標準的な日本のサラリーマンなので、多くの事を体験する時間を作るのが難しくはありますが、これからも色々な事を経験し、世界を広げたいものです。働き方改革が進むことを切に願います。

作用反作用逆転の発想

前方に力を伝えると、後方へも力が加わります。前方へ力を伝えたい場合、普通は前方へ力を伝えようとします。しかし、後方へ力を伝えようとし、その際生まれた反作用の力を使うという方法も存在します。それこそが、我々の使う、”隠”です。
 
“陰”には、前回、前々回紹介した、ズレをも含んでいます。先ほど述べましたように、普通は力を伝えたい方向に意識を集中します。パンチを打つ際には、力の流れを前方に打ち出すことを意識していると思いますが、陰の打撃を使う際、意識する力の流れは逆になります。
 
前方へ打ち出させる腕に対し、持っている意識が違うところにある。ただ手は力を伝える導線にすぎない。このズレ、意識の秘匿も”陰”という名前にぴったりだと思います。
 
 
最後に、これまで紹介してきた陰の技術は、重心移動だけでした。
しかし、作用反作用の力を使うという観点で見てみると、一点だけである必要はありません。
 後方の力:肩 + 腰 + 脚
 前方の力:腕 + 腕 + 腕
であってもよいのです。これをさらに分割していくと、ごく小さい動きで”陰”をかける事が可能となります。
 
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興味を持たれましたら体験も可能ですので、お気軽にお問い合わせください。
松尾
dice.k.13110@gmail.com
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敵と友達になるという事

前回の記事で紹介した、「格闘技は身体のコミュニケーションだが、敢えて思考と行動をずらし、会話のキャッチボールを行わない事で混乱させる」、という技術に関し、よくよく考えてみると、骨の技術(物理学)、皮の技術(生態学)でも使用している気がします。
 
我々の道場では、上記技術を知っている者同士が技を掛け合うので、ある程度、身体のコミュニケーションが成立してしまいますが、技術を知らない方が受けると、日常や格闘技の動きと異なるので「あれ?その方向に力がくるの?」「あれ?このタイミングじゃないの?」と混乱されることが多いです。私も入会当初は良く混乱していました。
 
それらを踏まえて、合気道の技が上手くいったときの判断基準を述べたいと思います。
 
合気道の技が上手くいったとき>
・取り(技をかける方)の状態
 「やってやったぞ!」と高揚感なく、ただ気持ち良く感じたり、
 完全な集中状態になったりする。
 
・受け(技を受ける方):
「やられた!」と敗北感やストレスを感じることなく、混乱したり、惚けたりする。
 ゆえに、やられた後に笑いだしたり、感嘆したりすることが多い。
 
 
上記のように合気の技が上手くいかず相手を倒すとき、つまり身体のコミュニケーションを成立させて、相手を倒すときというのは、会話で置き換えると、言いくるめたり論破したりする事と同じ状態です。よって受けは、敵愾心を抱きます。

対して、ズレを生じさせると訳が分からない。訳が分からないけど、驚くようなことが起きている。手品やマジックを見せられて敵愾心を抱く人はいないと思います。
 
 
合気道で最も強い技は、合気道の最大の技は、”自分を殺しに来た相手と友達になる事”と塩田先生はおっしゃったそうですが、友達になろうと意図するのではなく、いつの間にか友達になっているような感覚なのだろうと推察します。
 
海外旅行などで全く文化が違う人と触れ合うと、小さな差異でイライラしたりせず、違うからなぁと大らかなままで接することができます。また、その差、ズレがある故に短期間で親しくなれる気がします。
 
ぶつからない事、ズラす事。またはぶつかっている点を悟らせない事。
これが技に重要な要素だと思います。
 
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思考と行動のずれ

心法(心理学)
先日紹介した「相手をどうにかしようとしない」という考え方を用いた技術に、空間感覚の技術(錯覚や心理学)を用いて相手の攻撃をかわして制する技があります。
具体的な方法は控えさせていただきますが、その考え方が、これまた先日紹介した「合気道は自分中心」と似ているので、紹介させていただきます。
 
 
身体のコミュニケーション
まず、あくまでも個人的な見解ですが、通常の格闘技は相手とのコミュニケーションが大前提であるように思われます。例えば、Aがパンチを打つと、Bはそれに対して防御したり回避したり反応を返す。そのBの反応に対し、Aも反応し行動を返す…といった具合にキャッチボールが成立しています。
 
これは視線移動やフェイントに関しても同様で、やりとりが成立しています。このように格闘技は相手と密なコミュニケーションをとっているものだと私は考えます。言うなれば、肉体を使って会話をしているのです。
 
そしてこの会話は、思考と行動が下図のように一致しています。

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対して、最初に述べた「相手をどうにかしようとしない」、「合気道は自分中心」の考えを使って攻撃をかわす技は、全く別の思考をもって、ある行動を起こす為、相手との会話が成立しません。
 
会話で置き換えると、話の流れや場の空気を無視した、ズレた回答をするようなものです。このような場合、皆さんも経験があるかと思いますが、人は一瞬思考が止まります。これを身体のコミュニケーションで用い、空白の一瞬を作り出し、制する技となります。
(上位秘伝の為、やり方の公開は控えさせていただきます。興味を持たれましたら、IAM護身術まで。火曜/金曜の一般稽古参加体験は無料となっています。)
 
 
無我の境地
余談ですが、先日昇段審査を受け、晴れて二段となりました。審査内容は、肩取り、短刀取り、太刀取り、二人掛に対して「なんでもいいから制したらOK。肩取りはプラス呼吸投げ。」さらに、天地投げと地風投げという内容。昇段用にみっちり形稽古をすることはなく、各々の技を数回確認程度にやっただけで、そろそろ受けるかという話に。
 
直前の稽古で、完全にトランスに入った瞬間があり、自分の腕が完全に別の人間の体のように勝手に動いて動きを制し、それを外から第三者の視点で見ている感覚がありました。それ故に、これならいける!と思い昇段審査を申請しました。
 
残念ながら、その再現はできませんでしたが、トランス状態に入り、無のまま動けたのは初めての体験だったので、非常に印象的でした。稽古中ですら再現できないレベルでは、実用や伝授するには程遠い為、これからも稽古に励みたいと思います。
 
 
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接触点を中心として舞う

温故知新
最近の稽古は、陰(力を伝える方向と重心移動が逆の動きをする技術の総称)の比率が高く、基礎技術の復習が多くなっていますが、復習であるがゆえに、細かい点に感覚を研ぎ荒ませることができ、新たな発見ができています。
 
また、習得済の技術はじっくりイメージトレーニングをすることで、「ここが本質か!」と気づくことも多く、復習の大切さ、一人稽古の大切さを身に染みています。
さて、本日は陰の稽古の復習をしていて気が付いた点を紹介いたします。
 

小手返しは小手先でやらない
小手返しを知っている相手や、過剰に逆らおうとする相手には小手返しが綺麗に出来ない事があり、色々試していたのですが、結局のところ、本質である「接触点を動かそうとしない」、「自分が動いて相手が動いたら合わせてあげると同時に導く」という事を失念していたことが原因と分かりました。傍から見た動きは、捉えた点を中心に動いているのですが、「小手返しをやろう」という意思が強すぎて、腕を使っていたのです。

これでは、相手に意が伝わりますので、反射神経や運動神経で対応されてしまいます。合気道は相手の気に合わせ、一体となって動くことが必要です。捉えた小手を中心に舞い、そのエネルギーをそのまま流すだけであり、腕を使うのは相手が崩れた後のフォロースルーに過ぎません。まずは自分が動くことが最優先という事です。
 
帰宅中にはっと気が付いたことなので、実際に試すことはできませんでしたが、他の技術に関しても同じことが言えます。
 
 
陰を使って相手を崩す稽古(収縮と膨張)
例えば、相手を引き寄せつつバランスを奪って倒す稽古(図1)でも、相手を引き寄せようとは全く思わず動いています。ただ自分の重心が前方へ移動するベクトルと、後方へ相手が向かうベクトルが釣り合うように動こうとしているだけです。
 
なお、この場合の中心は、自分と相手の中間になります。この中心に対し、自分の重心と相手との接触点を収束させる意識で動くと、「引き寄せよう」という意識が相手にばれなくなると思います。

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合気道は自分中心かつ相手に合わせる
上記の稽古や技術を使っていると、「相手をどうにかしてやろう」とは考えていないことに気が付きました。振り返ってみると、先生の指導も相手をこうしろああしろという内容は含まれていない気がします。
 
自分が完全な動きをすることで相手がつられ、つられた相手に合わせてあげる。相手と接触したのちは完全に自分の世界に入り込んだ方が技は効いていると思います。合気道が「動く禅」といわれるのもわかる気がします。
 
 
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人を動かす

人を動かすにはまず自分が動く
『人を動かす』とは、自己啓発本として古くから読まれている、デール=カーネギー氏の名著ですが、合気の技で人を動かすには、「まず自分が動く」事が必要となります。
 
『人を動かす』にもそんな内容が書いてあったような気もしますが、ずいぶん昔に読んだので忘れてしまいました。が、良いと思った本は、詳細は忘れてもエッセンスは自分の中のどこかに生きているような気がします。
 
さて、話を戻して、「人を動かすにはまず自分が動く」に関してですが、さらに付け加えると、「腕や足の小手先の動きではなく全身で動く」事が重要です。
 
これは運動エネルギーを伝えて動かす骨の技術の他に、接触した点を通じて相手の感覚を惑わす、皮膚感覚の技術でも使われる動きになります。では、この皮膚感覚をどのように習得すればよいのでしょうか?
 
 
皮膚感覚の技術の稽古方法
今回は簡単な一人稽古方法を紹介します。非常にシンプルなので「こんなことをしていて強くなれるわけがない」と思われる方もおられるでしょうが、合気の技とは非常に繊細なものです。よって繊細な感覚を磨く稽古、ゆっくりとシンプルに動く事に神経を集中する稽古は、上達に非常に有効であると考えています。この考えは、二年三ヶ月の稽古を通じ、日を追うごとに強くなっています。
 
ちなみに、この動きは二教、回転投げ、入り身投げetc…に使われているので、技を綺麗に見せる為だけでも有効な稽古と思われます。
 
さて、具体的な稽古方法ですが、過去に紹介したハイワンを簡略化した動きになります。違うのは意識だけです。合気の稽古をしたことがある方ならわかっていただけると思いますが、技をかける際、意識を変えるだけで微妙に動きが変化し、全く違う質の技に化けます。一人稽古でも同様という事です。
 
では、下記に簡略図と、各技術の稽古の際、意識すべき点を記載します。
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空気をなでる感覚と両腕が繋がっている感覚を意識して動くことで、触覚を鋭敏にするとともに、”何かにつられて動かされる/動かす感覚”を磨くことができます。この感覚が磨かれることで、「自分が動くことで相手を導く」技の精度を上げる事ができるのです。
 
 
余談
上記の練習を行うと、「体全体を動かせば、腕を動かさなくとも、腕はかなりの距離を移動する」事も実感できると思います。二教、回転投げ、入り身投げの際は腕で引っ張ったり倒したりするのではなく、体全体の動きを伝えることを意識すると、より技をかけやすくなるので、ぜひ意識してみてください。
 
 
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松尾
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